(布団の中で戯れる朝の二人 ※ナチュラルに事後注意)
朝の光が眩しい。
導かれたように意識を取り戻した僕は、ゆっくりと瞼を開けた。
そこには既に見慣れてしまった法隆ぢの天井があって、思わず苦い笑みを零してしまった。
寝惚けた身体を起こすと、そこには服を着ていない自分の身体があった。
だけれど別にそれには慌てない。だってもう、僕にとって「いつものこと」に成り果ててしまっていたからだ。
僕はそのいつものことを作った隣にいる元凶に呼びかけた。
「太子…起きてください。朝ですよ」
ぐぎががぐがと普通では発することなど出来ないであろう奇声を容易に発せてしまう男、太子は結局寝返りを打っただけで起きなかった。
人が起こしてやってんのにこいつは、と思わず僕は自分と同じく服を着ていない彼の肩を掴んだ。
「たーいーし。起きてくださいってば。今何時かもまだ確認してないんですから」
「んー…妹子ー…」
「はいはい妹子ですよ。小野妹子はここにいますからおきてくだ」
さい。その続きは紡げなかった。肩にかけていたはずの手首は簡単に掴まれ、起きていたはずの僕の身体はまた布団に沈むことになった。
突然の衝撃に身を竦ませるが、痛みも何もなく、そこにはさっきまでの布団のあたたかさと、意地悪そうに笑っている太子の顔があるだけだ。
「おはよ、妹子」
「……おはようございます太子、また狸寝入りですか」
「別に狸寝入りなんてしてないわい!ただ起きるのが早いだけじゃい!」
正確には僕が呼んだ時点で既におきていたらしい。やはり狸寝入りじゃないか。
こういうのも日常茶飯事だ。起きていると思えば起きていない。起きていないと思えばこういう風に起きて悪戯を仕掛けるしで。
起きていなかった場合は僕が蹴飛ばし、起きていたら今と同じように布団の中に連れ込まれるのだ。
このオッサンは自分は寝つきもいいし目覚めも良いぞと自慢しているのだが、そうならいびきと寝相を何とかして欲しいものだ。
かといって僕がそのように言うと、妹子は別にぐっすり寝れてるみたいだからいいじゃんと返されるだけである。
そう言われる僕は太子の言ったようにいびきにも寝相にも慣れてしまっているために、特に害されてはいないのだ。
だけれどそんなの屁理屈だ。目覚めたときに一番最初に太子の奇声を聞く僕の身にもなってほしい。
「いもこー。寒いー。君が出たせいで布団の熱が冷めたじゃないか。もっと寄りんしゃい」
「太子、いい加減起きなきゃいけないと僕は思ったからさっき起こしたはずなんですけど!?」
「いいからいいから」
何がいいのだ。僕の意向は完全無視のように、大きく長い手が僕の背中に回った。冷たい。
そのまま温い太子の身体に引き寄せられてしまう。布団の中だから上手く身動きをすることが出来ず、結局僕はされるがままだ。
あったかい。はいはいそうですか。いもこ、かおあかい。うるさいですね。かわいいなあー。だまれ。
他愛もない会話が静かな一室に響いていく。ある程度の言い争いが終わったあと、太子がぷっと吹き出したように僕の頭を抱えて抱きしめを強くした。
「うぐ、ち、窒息させる気ですか」
「だ、だれもそんな強くしてないだろ!?大体君、私より力なんて二倍も三倍も強いじゃないか。好きなときに抜け出しんしゃい!」
(馬鹿だなあこの人、自分から出て行くわけなんかないだろ)
心の中の独り言に僕はかなりこの人に悩まされているのだと改めて認識した。
気がつけば太子がくすくすと笑っている。何ですかと怪訝そうに僕は太子に言う。太子はまだ笑った声のままで、僕に告げた。
「しあわせだなーって思って」
「……そうですか」
今度ははいはいとは言わなかったことにこのひとは気づいているだろう、か。
「妹子はしあわせじゃない?」
「………まさか、」
しあわせに、きまってんじゃないですか。
ぶっきらぼうにその後告げた言葉に、太子は嬉しそうに笑うと僕のひたいにキスをした。
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