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太妹への愛により作られてしまった、半ば勢いに乗りすぎた期間限定日和サイト。 もっぱら太子と妹子しかいません。 たまに自重しない時にはご注意を。
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Posted by - 2024.05.03,Fri
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Posted by 緋夏(ひなつ) - 2008.09.19,Fri

(序章です。他キャラが出ます^p^発言で誰だか分かりますねww)








 

「おい妹子」
しんしんと降る雨の中、全身青の姿をした彼はもちろん青い傘を持ちながら僕に振り返った。
何ですかと問いかける前に彼はその場にしゃがんだ。何があったって言うんだ。
「道端で何いきなりしゃがんでるんですか太子…」
「いいからほら、これ見ろって」
しつこく自分を呼ぶその声に思わずため息が出そうになりながらも、見ろといわれた方向にしゃがまないまでも身体を傾け合わせる。
その見た先に小さく鳴く声が聞こえた。
「…猫、ですか?」
小さな箱に入れられた猫は窮屈そうに身を捩じらせながらも、呼びかけに答えるように一度にゃあと鳴いた。
太子はふーと小さく息を吐くと意地の悪い笑みを浮かべながら僕のほうを見た。
「ですかって何だよ妹子め。もしかしてお前猫が分からないのかー?君、犬しか分からないのはどうかと思うぞ。あ、あと馬か」
「分からないなんて言ってません!ただ太子が動物っていうと犬のイメージがあるでしょう」
猫は意外だったんですよ。そう僕が付け足すように言うと太子はそうかと返して猫のほうを向いた。
「私、わんちゃん大好きだもんな。猫も好きだけど…。それにしてもお前、随分濡れてるなあ」
後半の台詞は勿論猫に向けてのものだ。太子は傘を放り投げると猫を両手で抱きかかえ、自分の胸にすっぽりと収めるように抱きしめた。
僕は思わず太子に近づき、自分のもつ赤い傘に太子を入れた。
何が濡れてるだ。放り投げたら自分まで濡れてしまうというのに。彼の自分見ずの行動にため息が出そうになる。
「太子、傘放り投げるなんて自分まで濡れるじゃないですか。猫もいいですけど自分も振り返って見てくださいよ」
「妹子が入れてくれるかなって思ってた」
猫を抱えながらにひひと僕に笑って見せた太子に馬鹿かあんたはと返してやる。
馬鹿じゃないぞとむくれるようだったが、とりあえず猫のほうに意識を向けたようだった。
雨でよかった。空気が冷えている。たったこんな一言だけで顔が熱くなるなんて馬鹿らしいじゃないか。
能天気な目の前の彼の姿に一度蹴りでも入れてやろうと思ったが、それはやめることにした。
とりあえずは僕もそのことから意識を離す為、太子の抱きかかえた猫のほうに目を向けた。
…太子の異臭(カレー臭…?)から離れるのだろうかと思っていたが、なんなく受け入れたようで自分から擦り寄っている。
その姿が可愛らしく見えているのか、太子は優しく自分の手で猫を撫でているようだ。
其れがなんだか、まるで恋人同士のようで―――
(いやいやいや、まて、まて僕)
まさか猫相手に、嫉妬しているというんじゃないだろうな?自分の考えに困惑する。
恋人同士というのはそのただのたとえであり、それを妬んでいるというわけではない。ない。無いはず、無いはず…なのだ。
(うわあ…何なんだよ僕…)
膝をついて落ち込みたいぐらいの勢いだ。羞恥と自己嫌悪によって気分が一気に下がる。
そんなことを思っていたら太子がいきなり立ち上がった。ジャージの中に猫を潜み隠しているようだった。
「よし、この子は私が面倒を見てやるでおま」
「た、太子がですか…。…猫はカレーを食べませんよ?」
「誰も食べさせるなんていってないだろ!というかそんなことせんわい!」
太子はむくれながらも右手で放って置かれた青い傘の柄を掴み雨の中で振るった。
雨に濡れたからの行動なのかもしれないが、あまり役に立っているとは思えない。どうせ雨は降り続けているのだから。
だけれどそんなこともお構いなしによおしと満足そうに笑った太子は青い傘を差し直した。太子が赤い傘から青い傘へと移る。
何だかそれが離れていくようで、…どこか寂しい。と、思う自分を今猛烈に殴りたいと思った。
「うわぁつめたっ!雨が!雨が傘の中で降るぅっ!?」
「当たり前でしょう、放置してたし振り回したりしてたんですから!」
寒そうに身体を震わせる太子にため息をつきながらも、そうなるならばこの傘から離れなければ良かったのにと心中で呟いた。
「さあて、猫は何食べるっけな。野菜かな。わんちゃんと同じような物食べるかな」
竹中さんにでも聞いてみよ、と心を躍らせている太子を遠目にその太子の胸の中にしまわれている猫を見た。
茶色の毛の、まだ、子猫だろうか?子猫というよりには大きすぎる気もするし、普通の猫と呼ぶには小さい。
まだ発展途上なのだろうか。その胸の中の猫と目が合うと、にゃあと小さく鳴いた。
「何だよ妹子。あげないぞ」
「いりませんよ。太子が面倒見るんでしょう」
腕の中の猫を守るようなポーズをする太子に即答でそう答えると、太子はそりゃもうと笑った。
「だってこの子は…」
その先を、太子はにししと気色が悪い笑みで噤むと僕を見てまたにぃっと笑った。何だっていうんだ。
「さー妹子!朝廷まで競争だー!どっちが先に濡れるか勝負だ!」
「濡れるんですか!?先に着くかじゃなくて!?」
「先に着くかだったら君、筋肉おばけなんだから負けるに決まってるだろ。というわけで先手必勝!」
「ちょ、まってくださいよ!」
水溜りを駆けて水しぶきを幾つもあげる太子を追いかける。この雨の中、何で走る羽目になるんだろう。
朝服が濡れるな確実に、洗濯しなきゃ駄目だなこれは。
と頭の奥底でぼんやりと考えながらも、それももう今更無駄な話だと認識して、ただ目の前の青い背中を追いかけた。

 

―――ぱしゃん。
小さく水溜りが跳ねる。だけれどその周りに、雨は降っていない。
いや、正確には降ってはいたが、その水溜りの周りだけ降っていないのだ。
そこに立つ、黒い姿を避けるかのように。
段々と遠くなることによって小さくなるその青い傘と赤い傘を見つめて、やがて消えたとき。
黒い姿は一息ついて、呟いた。
「猫に嫉妬、ね。うちの秘書もそれくらい愛想があればいいんだけどなあ」
そういい終わった後、黒い姿は何か思いついたような仕草をして、そして口元を楽しそうな笑みに浮かべた。
「…幸せな恋人たちに、ちょっとだけ遊戯をしてやろうかね」
その声色は、至極楽しそうだった。先程から降り続いていた雨が段々と泣き止んで来ると、その雲の隙間から小さな光が射した。
光が射すころには、黒い姿はまるで何処かに溶けてしまったかのように、消えていた。



 

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