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太妹への愛により作られてしまった、半ば勢いに乗りすぎた期間限定日和サイト。 もっぱら太子と妹子しかいません。 たまに自重しない時にはご注意を。
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Posted by 緋夏(ひなつ) - 2008.09.14,Sun
(法隆ぢで妹子を泊まらせた時。太子のほぼ独白のようなもの。太子が妹子への本当の気持ちの自覚。)

 


暗闇。その闇の中には窓からの僅かな光が射すだけだ。
私はゆっくりと瞼を開けると、隣に私と同じように横たわる彼を見た。
(さっきまではあんなに嫌がっていたのに、寝るとやっぱりこんなもんか)
先程までの争いぶりは凄まじかったなあ。思わず回想してしまう。くすりと笑えた。
だけれどその笑いでも、彼と私は至極近くにいたせいか彼が「ん」と小さく声を出して身じろいだ。
その身じろぎに身体を強張らせてしまうが、彼がまた同じように寝息を立てるのを見てほっと息をついた。
…ああ。欲張りになったものだな、私も。
法隆ぢの一室であるこの部屋で一つの布団で彼と一緒に寝る光景は、明らかに異端だった。
だがこうしたのも私が折角なんだから一緒に寝ようと彼を誘ったことでこうなった訳で。
結局は摂政命令で押し切りこのような形にしてしまったのだ。
こんな風に彼と添い寝をすることになったのは、隋の野宿以来だろうか。
あのときは自分の体の寒さを言い訳に、彼を一緒に寝させたんだ。布団が無いから抱擁までして。
彼の身体は予想通りに温かくとても心地が良かった。お陰で久しぶりに幸せな夢も見れたというものだ。
……彼が私に、まるで恋人のように擦り寄るという甘い夢。
そう、夢だ。夢なのだ。そんなことは分かっている。私が一方的に彼のことを想っているだけで、その夢が現実になるなんて思ってもいないのだ。
大体彼に他に想い人が居るかもしれないのだし、現実になれなどの浅はかな考えは彼にとって不愉快でしかないだろう。
…想い人。考えたのは自分なのに、心に針が幾つも刺されたような気がした。
(弱いな、私も)
彼のこととなると、もうこれだ。気が滅入る一方の自分に心で深くため息をつき、とりあえずこの考えを解放することにした。
じゃあ何を考えるか。私は目の前にある彼の寝顔を見つめてみた。
とても安らかで、邪気のない寝顔。悪く言ってしまえば、無防備で、襲われても仕方ないような寝顔。
(でもそんなことをしてしまえば、)
彼との関係が崩れるのは手に取るように分かる。触れようとしてしまえば彼が怯えた顔を見せ、拒絶していくだろう。
傷つけたくない。そんな顔を見せてほしくはない。…拒絶されたくない。

だけれどこの欲はなんだ?

触れたい。踏み込みたい。彼の一線に。心に。身体に。沸き起こるような衝動が、自分の体を支配しているのが分かって居た堪れなくなった。
隋の時はそんなこと思わなかったというのに。彼が好きだと分かっていても、それでも一緒に居られればそれだけで良かった。
それなのに、何で私はこんなにも求めている?今だってそうだ。彼とこうやって寝ていることも、彼と一緒にいたくて、もっと近くにいたくてしょうがなかったから。
…ああ、そうか。隋の時は、一緒にいるのが当たり前だったから。だからこそ何も思わずやっていけたのだ。
でも、もう離れた。お互い仕事で忙しくなり、会える機会も少なくなった。
私はこの地位だから、例え妹子とすれ違えたとしてもそれが正装時であった場合、目線を合わすことも出来ない。
その遠ざかっていく背中を追うことも、出来ない。
此れがこんな堅苦しい正装でなかったら、今すぐにでもその背を駆けて行き声を掛けるのに。

…いつの間にか手が、妹子の頬に触れた。私の指先が、妹子の頬をなぞっていく。
その滑らかな肌触りに、思わず欲を増させてしまう。
今の妹子は、自分の思い通りになる。
「ん、」
小さく妹子が出す声が、更に自分の欲情を掻き立てて行く。どうして。
どうしてこんなに私は、お前を好きになってしまったんだろう。

「たい、し…」

心臓が思い切り脈打った。目が覚めたか、と思ったけれどそうではなかったようだ。
先程と同じように寝息を立てる妹子を、今度は落ち着かない鼓動でゆっくり見つめた。
ああもう。何なんだよ君は。どうしてそこまで私を好きにさせるようなこと。
「…いもこ」
……分かった。分かってしまったよ、私は。
私は、ほしいんだ。本当の本当に、お前が、お前の全てが、ほしいんだ。
「好きだよ」
小声でそう彼に向けて呟いた。彼は反応をしない。それでいい。こんな隠れて本当の気持ちを伝えるわけにはいかない。
君に思いを少しずつ伝えたうえで、最後に爆弾を投下してやる。
明日からのことを考えると、何だか楽しくてしょうがなくなってきた。さあ、どうしてやろう。
とりあえずは今日は瞼を閉じて、君と同じ夢を見れることを願おう。と、その前に。

もう容赦はしないから、覚悟をしておくようにね。妹子。

そう笑って呟いて、私は今度こそ瞼を閉じた。

 

 

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